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キンモクセイと存在感

キンモクセイ

季節感を尊ぶ東洋人の好きなひそやかな存在感


 暑さも和らいだ仲秋の頃、どこからともなく漂う甘い香りで「ああ、こんなにキンモクセイが植わっていたんだ」と気付かされる。中国原産の常緑樹で小さなオレンジの花を無数につける。日本では多くないが花の白いギンモクセイもあり、こちらが原種。日本にはほとんど雌株がなく、実を見るのは難しい。中国では花を使ってフレーバーティー(果物や花の香りを付けた紅茶)にしたり、桂花陳酒というデザートワインを作る。  年に5日ほどの間だけ甘美で濃厚な香りを漂わせる花のほか、何の特徴もない…といっていい。「彼ら」は北海道を除くほぼ全国に植えられ、実に影の薄い生涯を送っている。何週間も次々花をつけて香り続けるジンチョウゲやクチナシと違い、一気に咲いて一気に散る、このサクラの如き潔さ。香りには昆虫への忌避作用があり(この香りの中では蚊にすら食われない)その身に近づく事を許している昆虫はホソヒラタアブただ1種という辺り、もはや高潔とさえ言える。
 あまりに潔すぎるせいか欧米では人気がないのだが、日本の庭では背景的な存在や目隠しとしてその需要は非常に高い。全体の和やふとした季節感を尊ぶ東洋人の好きなひそやかな存在感を醸しているといえるか。
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