3月にお休みをいただき、九州へバイク旅に出かけました。
熊本県の阿蘇山や福岡県の平尾台カルストなど、バイク乗りのメッカを堪能しましたが、もっとも印象に残ったのが、大分県中津市、山国川の上流域にある渓谷「耶馬渓」。日本新三景にも選ばれた、人気の景勝地です。

その耶馬渓の中でも、観光スポットとして最も知られているのが「青の洞門」でしょう。
洞門とは、隧道、すなわちトンネルのこと。
江戸時代、山国川に面した競秀峰のすそ野は、交通の難所として恐れられており、多くの人馬が川に転落して命を落としたそうです。
これに心を痛めた旅の僧・禅海和尚は一念発起。ノミと槌だけで隧道の開削工事に着手。30年もの時を経て、明和元年(1764年)にこれを完成させました。隧道を含め、和尚が拓いた新道は、長さ約342mというから驚きです。

この話、どこかで聞いたことありますよね? そう、文豪・菊池寛の代表作「恩讐の彼方に」。同作品は、この故事をモチーフにして書かれた小説なのです。
現在の「青の洞門」は、開通当時とはずいぶん変わっているようですが、今でもノミによる掘削の跡が所々でみられます。
実際バイクで走ると、薄暗く細い道をクネクネと曲がって進まねばならず、車やバイクにとってはけっこうな難所。しかしながら、秘境感にあふれたその雰囲気は抜群です。

ちなみに、この洞門は徒歩でも通り抜け可能。せっかくなので、近くの道の駅にバイクを停めて、散策がてら歩いてみることに。その途中で、衝撃的なものを見つけました。

そう、「青」と書かれたバス停の標識。
私はてっきり「青の洞門」の「青」は、山国川の美しい水面の色にちなんだものだと思っていました。ようは、イタリアのカプリ島にある「青の洞窟」パターンですね。
イタリアの「青の洞窟」は、カプリ島の海の美しい色彩、いわゆるカプリブルーが海面下にある洞窟を染め上げていることから名づけられたもの。ところが、「青の洞門」の「青」は、この隧道がある地域の名を冠したものだったのです。
いやあ、実際に行ってみないと分からないことってあるんですね(笑)
冗談はさておき、禅海和尚の30年にわたる尽力に、尊敬と感謝の念を込め、一歩一歩地面を踏みしめ、無事、「青の洞門」をくぐらせてもらいました。
建物総合事業本部 大阪支店 志方 正紀