最近、体の一部として何の故障もなく機能していたものに、
突然ガタが生じ、38年目にして交換する羽目になってしまった。
忘れもしない、あさま山荘事件があった年のことである。
この大事件とは全く関係ないところで
一瞬にして前歯4本を折るというアクシデントにあってしまった。
当時、職員の体力の強化が求められ、
全職員に体力測定が義務ずけられ、
その一つにあまりやったことのない
40メートルドリブル走行があった。
機動隊勤務から本部に異動してすでに4年、
デスクワークのため極度の運動不足のところに、
測定場所がビルの屋上で
しかも溝の深い碁盤の目のあるコンクリート、
足は勤務用革靴、準備体操なしの一発勝負の計測。
ダッシュは良かったものの20メートルで反転し、
帰りのコース途中で前のめりに転倒、コンクリートに顔面殴打、
前歯4本折って血だらけ。不名誉この上ない公務災害でした。
歯4本の欠損は、
小指の第2関節からの欠損と同等の障害認定とのこと。
知り合いの歯医者に駆け込んだものの先生も4本も折れたのを見て、
頭を抱え込んでしまった。
当時、警備の現場では、
デモ隊からの投石によって歯を折る機動隊員が多く、
現場復帰が優先され歯の欠損の治療は入れ歯方式が一般的だった。
一晩、考えた先生は、
言葉に不自由をきたさない方法としてブリッジを選択、
前歯7本を総入れ替えすることにした。
最先端の技術を使い治療してくれたK先生とは
今もお付き合いをいただいているが、
この丈夫な歯があったおかげで、
私の糖尿病も大いに助かっていると思う。
当時、治療費があまりにも膨らみすぎ、
担当医と私が東京都の公務災害認定機関に呼び出しを受け、
担当官の前で大口を開け歯を見せたことを思い出したが、
しっかりした治療があればこその38年間だった思う。
私が先生を尊敬しているのは治療技術だけではないんです。
その後先生は若くして脳卒中に倒れ
右手、右足に大きな後遺症を負ったものの、
冬場は体の負担を考え、ハワイでリハビリを行うなど、
1年もしないうちに右手の機能を完全に回復させ、
現在も現役で活躍されていることであり、
その努力する姿は
糖尿病治療を続けている私にとって良いお手本である。
常勤監査役 千葉 久公