古代と同じ! 大和三山と藤原宮の風景

少し前の話ですが、奈良県橿原市にある、藤原京藤原宮跡を訪問しました。

藤原京とは、約1300年前、平城京に先立って、持統・文武・元明天皇が治めた都です。一辺約1㎞四方の中に、大極殿や朝堂院といったまつりごとの施設、天皇の住まいである内裏などがあり、西暦694~710年の16年間、この地は日本の中心でした。

そんな都を守るように鎮座するのが「大和三山」。

奈良盆地南部に位置する、「香久山」「畝傍山」「耳成山」の総称で、古より信仰の対象として、景勝地として知られてきました。藤原京を三方から囲んでいます。

私も知識として大和三山を知っていましたし、歴史ファンのはしくれとして、橿原市には何度も足を運んでいます。ですが、実は私、山の形や名前を覚えるのが苦手で、誰かに「どれが大和三山? どれが香久山?」などと聞かれても答えられない……(苦笑)。

それではイカンと思い、三山に囲まれた藤原宮跡から、そのお姿を拝見し、よく覚えようと考えたわけです。

で、藤原宮の東にあるのが「香久山」。

標高152mという里山レベルの高さながら、天から降ってきたという伝承があり、三山の中でもっとも神聖視されたそうです。

そして、西にあるのが「畝傍山」。

こちらは国祖・初代神武天皇とゆかりが深い山ですね。周囲には神武天皇をお祀りする樫原神宮、ふもとには神武天皇の御陵があります。

最後が北方に座する「耳成山」。

近鉄電車大阪線の車窓からよく見えるので、唯一その姿かたちを知っていました(笑)。整った円錐形が美しく、非常に印象的なので、近鉄電車に乗った際は、ぜひ眺めてみてください。

さて、藤原宮跡のそばには資料館があり、施設内には、持統天皇が詠んだ「春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山」の歌碑が展示されています。

百人一首にも収められている有名な歌ですが、百人一首では「……衣干すてふ」とあるところ、歌碑では「……衣干したり」となっています。万葉集の記載にならったのでしょう。万葉集では「衣干したり」とあり、京都(平安京)で編纂された百人一首ではなく、奈良(平城京)で編纂された万葉集バージョンを採用することに、奈良のプライド?を感じてしまいます(笑)

いずれにせよ、この日、私が見た山の姿は、1300年前の人々が見たものと同じ。長い時を経てなお、風景とともに文化や遺構を保存してくれた方々に感謝です。

建物総合事業本部 志方 正紀