今から二十年近く前、ネットでウィーンの夭逝の画家エゴン・シーレの「ほおずきの実のある肖像」のポスターをオーストリアの美術館から購入した。

今でこそ、ネットショッピングは気軽で便利なものだが、その頃、日本でのインターネット普及率は30%台。HPを持っている企業や店舗も今より少なく、ダイヤルアップ接続だった。まず、ネットに接続するのにも時間がかかった。
「ほおずきの実のある肖像」は、三十年前は個人の所有だったので、渋谷のBunkamuraなどにきていた。しかし、オーストリアのレオポルド美術館が買い取ってからは、日本に来ることがなくなった。そのため、せめてポスターを家に飾りたいと、ネットでレオポルド美術館にアクセスしたのだった。幸い、レオポルド美術館はHPを開設していた上に、英語のサイトもあったので、なんとか「ほおずきの実のある肖像」のポスターを販売していることが確認できた。
日本にポスターを送ってくれるのだろうか?とダメもとでお願いしたら、筒状の入れ物に入れて、エアメールで送ってくれたのだ。当時の通貨はシリングだったが、日本円にして5,000円程度だったと思う。
早速、神田の文房堂にポスターを持ち込み、額縁をオーダーした。文房堂は、「美の巨人たち」に登場するくらいに歴史のある画材屋さん。今でも趣のある外観のお店だ。

フレームには、シーレが生きた19世紀末のアールヌーボー風のアンティークなものを選び、
制作してもらった。額縁は2万円ちょっとかかってしまったが、かなり満足な出来上がりになった。
今では、シーレのポスターは日本でも気軽に手に入り、もっと安く購入することができる。しかし、苦労して手に入れたこのポスターは、自分にとって貴重なものとなっている。
そして、突然おかしな英語でポスターが欲しいと言ってきた日本人に、快く対応してくれたレオポルド美術館のミュージアムショップの人に感謝している。
管理本部 課長代理 K. T.